ガス灯の点る湯の街そぞろゆく名残りの月の天心に澄む ガス灯の仄かに照らす湯の街にゆつたり刻のながるるらしき 木造の廊下を歩めばキシキシと軋む音する湯の宿の夜 カラコロと下駄の音闇にひびかせて銀山川の板橋わたる 後夜の月窓にさしくる湯の宿に父母を語る夜は深けつつ 文殊渓紅葉の路をふみゆけば茂吉の歌碑のどつしり座る 最上川の川面を照らす夕光は十八歳の孤独を射しき ふるさとの駅より向かふ最上川芭蕉の茂吉のわたくしの川 茂吉との所縁のありや「聞禽寮」わが大石田高校女子寮 かの昔銀を掘りたる洞のあり粗岩照らす秋の夕映え